30日告示の県議選長野市区(定数10)で、2005年に合併した豊野、戸隠、鬼無里、大岡の旧4町村域に各陣営が注意を向けている。名乗りを上げた15人のうち、ここを拠点とする立候補予定者は今のところおらず、「ほかに先んじて顔と名前を売り込みたい」と後援会活動が熱を帯びつつある。
<「選択肢」多く、有権者戸惑い>
旧4町村域の有権者数は1万5349人(1日現在)。長野市区全体の有権者数30万6400人余(同)から見ると5%程度だが、全般に投票率が高い(前回県議選は63―77%)だけに「激戦を制するのに得票は重要」との声は少なくない。当落を左右する「重点地域」に位置付ける陣営もある。
2月下旬、同市鬼無里の中心部で開いた、ある立候補予定者の後援会支部設立総会。集まった20人余の前で「鬼無里も含む旧町村域の担当議員となることをこの場をもってお誓い申し上げます」と声が響いた。この予定者はすでに豊野、大岡に支部を設けており、戸隠でも準備中だ。
長野市内での事務所開きの際に、士気を高める手締めの音頭を旧町村域の後援会顧問に依頼する予定者もいた。また、後援会の印刷物に風景写真を大きく載せ、旧町村域「重視」を印象づけるケースも見受けられる。
ただ「あまり手を広げすぎない方がいい」と、活動を自分の地盤周辺に絞る予定者もいる。
環境が一変したのは有権者側も同様だ。4地域が上水内郡・更級郡大岡村区に属していた前回選は候補者が3人だったのに対し、今回は「選択肢」が5倍になる。
JR豊野駅周辺で住民に尋ねると、「人柄や経歴がさまざま。多すぎてよく分からない」(70代女性)「まだ上水内郡区の気持ちが抜けず、長野市区の実感がわかない」(60代男性)といった戸惑いが聞かれた。
実際、ある立候補予定者の後援会幹部は「旧町村域でのあいさつ回りは、まず選挙区が変わったことから説明している」と困惑気味だ。
「新たに長野市になった地域では現職も新人も同じ。顔を売り込んだ方が勝ち」。そんな見方がある中で水面下の戦いが進行している。