信濃毎日新聞ニュース特集

トリノ冬季パラリンピック

笑顔で締めくくり 男子リレー伝田「支えありがとう」
2006年3月18日掲載
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 【プラジェラート(イタリア)17日=井上典子】「悔いはない。家族と職場の人たちに、支えてくれてありがとうと伝えたい」
 トリノ冬季パラリンピック第8日の17日、ノルディックスキー・クロスカントリー男子リレーでアンカーを務めた伝田寛選手(31)=長野市役所・長野市=は、自身のパラリンピックの舞台を笑顔で締めくくった。いったん競技から離れたが、思い直して3度目の出場を果たしたトリノ大会。今回限りで海外大会から退くつもりだといい、「最後のレースでいい走りができた」と充実感に浸った。
 右手指欠損の障害があり、地元開催の1998年長野大会を目指してクロスカントリーを始めた。4年前の米ソルトレークシティー大会はバイアスロンで4位。「体力面で一番いい時期だった。充実していた」。達成感があり、03−04年シーズンは大きな大会への参加を見送った。
 本格復帰は昨シーズン。トリノ大会出場を狙う選手たちを見て、心が騒いだ。ただパラリンピックを目指すとなると、練習や大会出場のため費用面で家族に負担をかける。そんな迷いを、妻の朋美さん(34)が吹き飛ばした。「『悔いのないように、やったら』と、何げなく言ってくれたことがありがたかった」。
 障害者スポーツも、企業に所属し、練習に打ち込めようになった選手が増えている。伝田選手は長野市役所の建設部監理課職員。海外の大会には参加せず、国内選考レースでトリノ代表を勝ち取った。
 トリノ入りしてからストックの握りの部分に、黒いマジックで「自分を信じろ、あきらめない」と書き直した。最初に出場した11日のバイアスロンでは、「これまでのことが走馬灯のように浮かんできた」と言葉を詰まらせた伝田選手。17日のリレーは最下位の10位だったが、前に追いつこうと力走。今度は「気持ちはさわやかです」と明るい表情が続いた。
【写真説明】パラリンピックへの挑戦を締めくくるレースで力走する伝田寛選手=17日、プラジェラート(井上典子撮影)


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