信濃毎日新聞ニュース特集

トリノ冬季パラリンピック

障害者のスキー競技会 広がる環境づくり
2006年3月 7日掲載

 10日開幕のトリノ冬季パラリンピックを控えた今冬、1998年大会の会場となった白馬村で障害者のスキー競技会が相次いで4回行われた。同村が全国規模の障害者競技会をこれだけ開催したのは初めて。地元のスキー関係者らの協力で、各大会とも滞りなく終えた。白馬は昨年のスペシャルオリンピックス冬季世界大会も経験し、スタッフが障害に配慮した指導法を学ぶスキー場も現れるなど、障害の有無に関係なくスキーを楽しめる環境づくりが広がっている。
 2月にはジャパン・パラリンピックのアルペン競技会とクロスカントリー競技会が開かれた。八方尾根スキー場が会場となったアルペンは、同大会としては初めて、国際スキー連盟(FIS)の公認コースで開催。クロスカントリーも五輪会場のスノーハープを使った。
 「国際規則にのっとった大会にしたかった」と、日本パラリンピック委員会。だが、運営資金は限られている。「白馬の人たちの協力がなければ大会は開けなかった」と感謝した。
 両大会の運営に当たったのは村スキークラブのメンバーたち。その数は毎日、60人ほどに上った。同クラブは長野五輪などの国際大会を含め、さまざまな大会の運営に携わっており、矢口公勝会長は「私たちには経験がある。選手にとってはトリノ・パラリンピックに向けた大切な大会ということもあり、引き受けた」と話す。
 両大会のほか、今冬は日本知的障害者スキー協会などが主催する日本IDアルペンスキー選手権、日本障害者スキー連盟主催のアルペンスキーポイントレース記録競技会も開催。4大会で迎えた選手は延べ約170人に上る。
 大会を引き受けるには宿舎など設備面の対応も必要になる。以前から障害者ノルディックスキー・全日本チームが定宿にしている同村神城飯森のホテル丸大は、スロープ、エレベーター、車いす利用者用のトイレなどを備える。
 同ホテルは選手だけでなく、県内外の障害者たちが普段から宿泊している。太田和夫専務は「障害者の大会や催しが村内で増えてきた。今季はほぼ毎週、障害者からの予約が入っている」と言う。
 白馬五竜とおみスキースクールは今季、家族連れを中心に障害者向けのスキーレッスンを始めた。約50人の指導員全員がそのための研修を受けている。担当の伊達仁彦さん(47)は「障害のためにスキーをあきらめる人もいると思う。障害の有無に関係なく、みんなに訪れてもらえるようにしたい」と話す。
 長野パラリンピックまで、スキーを楽しもうとする障害者はリフト利用や宿泊などで不便を強いられ、大きな競技会は受け入れ先を探すのに苦労したという。白馬村での取り組みは、障害者の活動の場を拡大していく上でも大きな意味を持っている。(井上典子)


<前の記事 トリノ冬季パラリンピック トップ 次の記事>

掲載中の記事・写真・イラストの無断転用を禁じます。
Copyright© 信濃毎日新聞 The Shinano Mainichi Shimbun