信濃毎日新聞ニュース特集

トリノ冬季パラリンピック

ノルディック・小林深雪 ナガノの女王「金」宣言
2006年1月 1日掲載
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 1998年長野大会のバイアスロン金メダリスト、32歳の小林深雪=北安曇郡小谷村出身=にとって、2005年は競技に打ち込める環境が整い、最も充実した1年だった。
 04年暮れに日立システム(東京)に入社。それまでは大町市の老人保健施設で、パート職員として働いていた。スキー部に所属する日立システムでは、出勤は月に10日前後、ほかの日は練習に充てられる。「『十分な練習ができないから結果が出せなかった』と言うわけにはいかなくなった。その緊張感がいい方向に作用している」
 パラリンピック出場は3度目。2002年米ソルトレークシティー大会・バイアスロンは6位。長野の金メダルを、滑り慣れたコースと大きな応援があった“地元の利”だったと振り返る。「自分の実力ではなかった」とも。
 視力は下方と両脇が少し見えるくらいだ。昨年8月末、エスカレーターに乗ろうとして転倒し、右足の甲を12針縫うけがをした。11月に滑れるようになるまでは、上半身の強化を目指し筋トレに力を入れた。今は、射撃に入る動きなど一つ一つの動作の無駄を省くため最後の調整に励む。
 「練習の遅れを焦っても仕方がない」。そんな気持ちを持てるようになったのは、ソルトレーク大会の苦い経験があるからだ。大会前の合宿で足をねんざしたが、休む決断もつかないまま本番へ。クロスカントリーの15キロフリーは途中で棄権した。
 昨年12月のワールドカップ今季開幕戦(イタリア)はバイアスロンで3位に入った。「長野はただがむしゃら、ソルトレークは不完全燃焼。今、地に足が着いた」と渡辺孝次コーチ(飯島中教諭)。「バイアスロンで一番いい色のメダルを狙う」という小林にとってトリノは、積み重ねてきた真価を発揮し、競技生活の集大成を懸ける舞台となる。
【写真説明】バイアスロンの視覚障害はビームライフルと電子音で標的をとらえる装置を使う。講演会で実演する小林深雪=上伊那郡飯島町の飯島中学校


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