信濃毎日新聞ニュース特集

トリノ冬季パラリンピック

来年のトリノ冬季パラ 日本代表、スポンサー獲得に懸命
2005年12月 5日掲載
05120501.jpg

 イタリア・トリノで来年3月、冬季五輪に続き障害者スポーツの祭典、冬季パラリンピックが開かれる。今回、各競技の日本代表チームは、合宿や遠征といった選手強化費用を賄うためにスポンサー企業の獲得に力を入れている。1998年長野大会の選手強化には、国が3年間で1億8000万円余を補助したが、その後、公的支援は激減しているからだ。県内選手も多いパラリンピックの冬季競技。障害者スポーツの普及と、日常的な選手強化につなげる長期的な戦略が求められている。
   (井上典子)

<「長野」後は公的支援激減 活動持続へ戦略必要>
 トリノ大会に向け、最も大きな支援を得たのはアイススレッジホッケーの代表チームだ。日立製作所に勤務する中北浩仁監督が、同僚とともに同社とグループ企業に働き掛けて協賛が決まった。
 日立製作所は金額を明らかにしていないが「活動すべてを支援する。今季の合宿、海外遠征などには数1000万円かかると聞いている」(広報部)とする。チームは、国内では岡谷市や北海道で合宿している。協賛が決まったことで合宿、海外遠征の追加を検討している。
 アルペンスキーの代表チームは、全日本スキー連盟(SAJ)で長年選手強化に携わり、昨季就任した松井貞彦監督を中心にスポンサー開拓に当たり、3社が決定。今季の海外遠征では、これまで選手が負担していたスタッフの遠征費を協賛金で賄うことができる。ノルディックスキーの代表チームは、4社・グループの協賛金を、12月に8日間イタリアで合宿する際の滞在費に充てる。
 ノルディックスキーチームの8月のニュージーランド合宿には10人が参加し、小林稔選手(松本盲学校)の場合、自己負担額は約60万円だったが、12月のイタリア合宿では20―30万円に軽減される見込みだ。
   ■  □  ■
 長野大会は地元開催で、選手が育っていない競技もあったことから、国が強化費を補助した。その後は、政府拠出の障害者スポーツ支援基金の運用益で助成することになった。この結果、支援基金により日本パラリンピック委員会(JPC)が本年度配分した強化費は、アイススレッジホッケーに330万円余。アルペン、ノルディックスキーは各120万円余にとどまる。
 JPCが負担するトリノ大会の選手の渡航費や公式ウエア購入費も、支援基金からの助成や日本障害者スポーツ協会の財源が頼り。JPCはトリノ、北京(夏季)の2大会に向け、選手派遣のためオフィシャルパートナー3社などの協賛を得ているが「選手強化に還元できるまでに至っていない」(事務局)のが現状だ。
 このため、各チームはスポンサーを開拓せざるを得なかった。ただ、アルペン、ノルディックスキーでは個人負担はなくならず、アイススレッジホッケーを含め協賛が決まっているのはいずれも今季まで。各チームはスポンサーと一緒にトリノでの健闘を誓う記者会見を開くなど、企業の支援に応え、支援を拡充、継続するためにも注目度が高まるよう努めている。
 アルペンスキーチームにとっては、来年1月末に開幕する日本初開催の障害者アルペンスキーワールドカップ志賀高原大会が「見せ場」の1つ。「どの種目でもメダルを狙う位置にいる。良い成績を挙げ、一層の協賛獲得の追い風にしたい」(松井監督)としている。
   ■  □  ■
 さらに、松井監督は、全国に地域組織があるSAJを引き合いに「底辺が広がってこそトップ選手も強くなる」と強調。競技人口を増やし、地域の活動を活発にすることが不可欠とする。
 ノルディックスキー代表チームの荒井秀樹監督や長野大会金メダリストの小林深雪選手(北安曇郡小谷村出身)らが所属する日立システムスキー部は、学校や企業からの講演依頼を積極的に引き受けている。地域社会とのつながりを深めることで障害者スポーツへの理解、支援が広がるからだ。各チームの努力にとどまらず、JPCをはじめ関係団体が資金調達や競技人口の底辺拡大をどう進めていくか、展望を示す時期に来ている。
【写真説明】中北浩仁監督(奥)が率いるアイススレッジホッケー日本代表チーム。練習着に協賛企業のロゴが入っている=岡谷市のやまびこスケートの森

[トリノ冬季パラリンピックと日本代表]
 第9回大会で期間は2006年3月10―19日。アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、アイススレッジホッケー、車いすカーリングの5競技を実施。日本代表チームの選手はこれまでのところアイススレッジホッケー15人、アルペンスキー13人、ノルディックスキー(クロスカントリースキー、バイアスロン)7人が内定。長野県関係選手(在住・出身・県内チーム所属)はそれぞれ8人、5人、3人。3チーム計35人中、16人を占める。

日本代表チームのスポンサー
【アイススレッジホッケー】
・日立製作所ほか日立グループ16社
【アルペンスキー】
・ビザ・インターナショナル
・ロッテ
・パラマウントベッド
【ノルディックスキー】
・日立システム
・セガサミーホールディングス
・ヤマザキナビスコ
・生協グループ


<前の記事 トリノ冬季パラリンピック トップ 次の記事>

掲載中の記事・写真・イラストの無断転用を禁じます。
Copyright© 信濃毎日新聞 The Shinano Mainichi Shimbun