信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
田中氏の手法に拒絶感 「次の改革」望んだ一票
2006年8月 7日掲載

 県民が悩み、考えた末、選んだのは「脱・田中県政」だった。投じられた1票1票が積み重なり、「民意」は次の4年間の県政を、現職の田中康夫氏から、新人の村井仁氏に委ねる選択をした。

 最終的に7万8000票余の差がついたとはいえ、村井氏と田中氏は最終盤まで激しい競り合いを演じた。多くの有権者が県政改革の継続を支持する中で、問われたのはその担い手の是非だった。

 田中氏のリーダーとしての姿勢、手法には根強い批判があった。旧木曽郡山口村が村民意向調査などを経て決めた越県合併に反対し続けた姿勢や、「批判は宝物」と言いながら、自身と意見の異なる人間を遠ざけ、時に切り捨てる姿は、次第に県民に拒絶感を覚えさせた。

 田中氏が理念として掲げた、県民との直接対話や、既存の組織、団体の声にとらわれないとする姿勢は、広い支持を集めた。それだけに「理念はいいが、やり方が伴わない」との落胆は少なくなかった。

 2日、南佐久郡南牧村の役場前。村井氏の演説を聞いていた女性は「(知事が代わっても)田中さんの改革のいいところは戻さないでほしい」と話した。県民は、時代の大きな変化に合わせ、県政の改革を前に進めていくために、「次の担い手」を選んだといえる。

 当選した村井氏は選挙期間中、「旧来の県政に戻そうと思って私を担いでいる人は必ず後悔する」と繰り返し、改革姿勢の継続を強調した。ただ、同氏を支えた県議や経済・労働団体、市民グループなどの間で、県政の方向性が必ずしも共有されているわけではない。「ポスト田中」の県政にどう道筋を付けるのか。田中氏に交代を求めた民意は今後、村井氏をより厳しい視線で見つめることになる。(宮坂重幸)


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