信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
村井氏、対話重視の姿勢強調 治水や教育に課題山積
2006年8月 7日掲載

 前自民党衆院議員の村井仁氏(69)が6日の知事選で現職の田中康夫氏(50)との一騎打ちを制し、長野県政は再び転換点を迎えた。村井氏は田中氏の直接民主主義的手法など、評価できる点は取り入れつつ、対話を重視していく路線を鮮明にした。田中氏とは異なる手法で、県政をどう前に進めていくか。村井氏は具体的な課題を通じ、改革の姿勢を実証していく必要がある。

 村井氏は6日夜、初当選の祝勝会場で「田中知事に期待を寄せる県民もいる。そうした方々の期待に応えたい」と基本姿勢を説明。政策として打ち出した市町村への権限、財源の移譲などについて、具体化を急ぐ考えを示した。

 田中氏の2期6年弱の県政では、公共事業の削減や入札制度の見直し、県財政の借金体質からの脱却などに力点が置かれた。村井氏は、公共事業や起債(借金)について「必要なものは行う」と述べ、立場を異にしている。

 一方で村井氏は、無駄な投資や借金を排する立場を堅持する考えも示す。市町村から要望の多い公共事業、県単独事業にどう優先順位をつけていくか。あらためて基本方針を語る必要がある。

 また、田中県政では決着せずに積み残した課題をどう扱うか。

 2001年の「脱ダム」宣言に端を発する浅川(長野市―上高井郡小布施町)の、ダムに代わる治水計画づくりについては、県の原案に対し流域の賛否が明確に分かれている。北陸新幹線建設工事との兼ね合いもあり、早急な対応が必要だ。

 県教委が進める県立高校統廃合について村井氏は選挙戦で「地域合意のない統廃合計画は白紙に戻す」と明言。ただ、6日の祝勝会場では「(再編は)教育委員会の権限で、知事がどのようにするか吟味しなければならない」と慎重な姿勢も示した。少子化が進む中、地域によって強い反対がある問題にどう着地点を見いだしていくか。

 また、今年2月県会に県が提出し、継続審査となっている県廃棄物条例案をめぐっては、市町村事務である一般廃棄物処理のための施設を建設する際、県知事との「事前協議」を義務付ける点に、市町村からの反発が強い。

 これらの課題に取り組むに当たり、県政運営に責任を持つ副知事、出納長をどのような態勢にするかにも「改革」に向けた村井氏の色合いが読み取れそうだ。

 村井氏が選挙戦終盤に掲げた11項目の政策の具体化はこれからだ。県庁組織の活力低下といった足もとの課題も直視し、県政運営をどうスタートさせるか。道州制論議の活発化、地方交付税制度の見直しといった地方自治を取り巻く環境も急変しつつあり、スピード感のある立ち上がりが求められる。


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