信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
垣間見えた主張の力点 県・市町村のあり方など議論
2006年7月17日掲載

 16日、今回の知事選で初めて立候補予定者3氏が有権者の前で意見を述べ合う場となった、松本市内での公開討論会。選挙戦で主張の力点をどこに置くか、それぞれの戦略もうかがえる展開となった。県の借金縮減の成果といった実績を強調する現職の田中康夫氏(50)に対し、県の役割の見直しや市町村との関係改善を訴える新人の村井仁氏(69)。新人の峯正一氏(44)は新たな財源確保策を主張した。参加者からは「今後の論戦を通じ、政策や手法、考え方をより明確にしてほしい」と望む声が聞かれた。

 田中氏「村井さんは市町村に十分財源を確保してもらうと言うが、(財源となる)補助金や交付税は縮減されている」

 村井氏「(田中)県政はいろいろある補助金制度をあえて使わず、(県としての)仕事をせずに借金を減らした」

 討論会の出席者3人はコーディネーターに近い方から峯氏、村井氏、田中氏の順に着席。互いに質問し合う時間では、相手を見つめながら疑問点をぶつけた。

 田中、村井両氏は互いを指名。田中氏は県や市町村の財源確保策、村井氏は田中氏が政党代表を務めることの県民にとっての意義などを相手に問い掛けた。

 この日最も時間が割かれたのは、市町村のあり方、県のあり方に関する議論だ。

 田中氏は「(県として)集落単位で県民の声を聞いていく必要がある」とした上で、村井氏が自身のホームページで、市町村が元気になれば県はなくなってもいい―と言っていることを挙げ「(県内に)住んでいる人は何をよりどころにすればいいのか」と質問。村井氏は「田中さんは私の言っていることを分かっている」と切り返し、「住民が直接かかわる市町村が地方自治の基本。県は地域が本当に欲することを手伝えばよく、県がずっと存在しなくてはいけないわけではない」と主張した。

 県の財政再建をめぐっては、田中氏は2000年の就任時に1兆6000億円を超えていた県債(借金)残高を毎年連続して減らし、逆に基金を増やしていると強調。「その結果、30人規模学級や乳幼児医療費の無料化といった独自施策が行えた」と述べた。

 村井氏は、大企業の誘致に多額の補助金を出すことに否定的な考えを田中氏が述べたことを踏まえ、「金の卵を産むニワトリを呼ぶためなら、金を使ってもいい」とアピール。県や市町村が企業誘致などを通じ「(新たな)財源を確保できる」と述べた。

 峯氏は、長野県の自然を生かして県として発電事業や希少金属の採掘を進め、「国から自立すべきだ」と主張。民間活力の導入も積極推進すべきだ、との立場を明確にした。

 討論会でコーディネーターを務めた日本青年会議所北陸信越地区長野ブロック協議会の熊谷弘・ローカルマニフェスト推進委員長は「地方分権の考え方や財政のとらえ方などに違いが見えた。(3氏の政策は)マニフェスト(政権公約)としては未完成だが、選挙戦での深まりを期待したい」と話した。


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