信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
政策・公約は 具体的な内容の発表はまだ
2006年7月16日掲載

 告示が20日に迫った知事選で、通常、選挙戦に向けて示される詳細な政策や公約が、いずれの陣営からもまだ発表されていない。事実上の対決構図となっている2氏のうち、現職で3選を目指す田中康夫氏(50)は、引き続き県政改革を進める基本姿勢を掲げ、新人で前自民党衆院議員の村井仁氏(69)は、県から市町村へ権限を移す考えを強調する。ただ、多様な有権者の関心に応え、任期の4年間で何を実現していくか、体系的に示す形にはなっておらず、選択の「手掛かり」はまだ不足気味だ。
 田中氏が立候補表明後、初めての機会となった今月10日の知事会見。政策や公約をいつ公表するのか−との質問に、同氏は「告示される時には整っているだろう」と述べた。さらに、選挙期間中にも内容の追加や強化があり得るとの考えを示した。
 前回2002年の出直し知事選では、告示8日前に「『こわす』から『創(つく)る』へ」と題した13分野、計60項目の政策を発表。民間シンクタンクなどの助言を得て、県独自の基準による「1・5車線道路」の整備や県産材利用の拡大などを掲げた。
 今回は−。同氏の推薦母体となる「しなやかな信州をはぐくむ県民の会」の関係者は15日、「(政策、公約は)まだ私たちにも示されていない」と話した。
 田中氏は会見で、県が導入を推進する木製ガードレールを「環境循環だけでなく経済循環、雇用循環、県が目指している社会を最も端的に示している」と例示。現職として、これまで県会に提案してきた予算や条例などが「すべて今後も実現すべきマニフェスト(政権公約)だ」と位置付けてもいる。
 一方の村井氏は立候補表明後、一貫して県と市町村の関係改善、役割分担の見直しに重点を置き、集会などで訴えている。県内の市町村数81を、後援会の名称(「輝く81の会」)にも取り入れて、基本姿勢を印象づけた。
 14日に長野市で開いた同会の設立総会でも「強い市町村を形成することが時代の要請だ」と強調。自身のホームページでは「ボイス81」と名付ける諮問委員会で、市町村長とひざを交えて意見交換する考えも示した。ただ、数値目標などを盛り込んだ詳細な公約を掲げる「マニフェスト型選挙」などには否定的な見方だ。
 14日の総会後、報道陣に対し村井氏は「民主党がマニフェスト選挙をやって以来、個別の政策について語ることが選挙だと考えられている。それでは(他候補と)違いを打ち出す材料にならない」と言及。「県の情勢にかんがみ、一番大事なことを重点的に訴えている」と説明した。
 陣営幹部も「個別のテーマについては、市町村や当事者ら関係者の話を聞きながら判断することが大切」と述べ、積極的には言及しない方針だ。
 立候補表明している新人でコンサルタント会社経営の峯正一氏(44)は、6月の出馬会見で水力や地熱発電事業などを行う公社を設立、自主財源確保に努めるとした。公約・政策の発表は行っておらず、「戦略的に一番有効な時期に公表したい」としている。


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