信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
真意を明かさぬ現職 告示2カ月切った知事選
2006年5月27日掲載
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 7月20日の告示まで2カ月を切った知事選で、現職の田中知事が依然立候補の意思を明らかにしない状態を続けている。今月に入り、県民有志の招きに応じて集会で県政運営の成果を訴えたり、市町村や県職員から反発のあった県政課題で「譲歩」を見せるなど、周辺には立候補に意欲的との観測が広がりつつあるが、会見などでは「決めていない」と述べるだけだ。「現職に勝てる」候補の擁立を模索する市民グループなどの動きを「競馬のレースのような話」とやゆする知事だが、自身が9月以降の県政にどう責任を持つつもりなのかも、語られないままだ。
 「議員はボランティアに。主婦や障害者、学生らが(議員となり)夜に議会を開けばいい」
 17日夜、長野市内のビルの一室で、市内の有志が田中知事を招き、県政の現状について話を聞く集会を開いていた。この日公務を終えて駆けつけた知事は、口コミで集まった約130人を前に、自身の県政運営や県議のあり方など、約2時間にわたって持論を展開した。
 主催した会社経営者の男性は、知事と議会の対立が続いた2月県会を経て「知事の話を直接聞きたい」と考え、県に打診。知事から快諾を得たという。この日知事選に触れる発言はなかったが、出席した市内の60代女性は「時間を割いて来たのは、知事選に出るつもりがあるんだなと感じた」と話す。
 知事の後援会「しなやかな信州をはぐくむ会」役員らによると、知事からは選挙準備に関し、一切指示はない。ただ、県庁や議会内には、知事の最近の政策判断に、知事選をにらんだ配慮を感じ取る向きもある。
 知事は22日、県職員組合などに対し、昨年12月に提案した給料調整額や諸手当の大幅な廃止・削減案を「再検討した」として、廃止対象を減らすなど組合側に歩み寄る案を提示。翌23日には、南信地方の救命救急センターの再配置をめぐり、これまで「自主的返上」を強く求めていた昭和伊南総合病院(駒ケ根市)側に、病床数を減らしてセンターを存続する方針を示した。
 いずれも、職員組合や地元自治体が「一方的」と反発してきた問題だっただけに、知事の方針転換に、市町村などには「知事選を前に、職員や市町村との摩擦を和らげる狙いがあったのではないか」との受け止めが広がった。
 県会内には、反対が根強い県立高校再編問題で「知事が来年度の一斉実施を延期すべきだと言及するのではないか」(北信の県議)といった憶測も飛ぶようになっている。
 一方で、知事に対抗する候補擁立をめぐる動きに対してはこのところ、積極的な発言も続いている。
 19日の会見では「調整型というか、キングメーカー型というか、一番不幸なのは名前を挙げられた方々だ」と、暗に連合長野の近藤光会長が代表世話人を務める「輝く明日の長野県を考える会」などの動きを批判。「この県政では違うという人は、じゃあどういう県政にするかっていうことを語るべきなのに、語られていない」と論評してみせた。
 ただ、自身の考え方について問われると知事は「私は出るも出ないも決めてない」(19日の会見)とするだけだ。
 知事が就任後間もなく打ち出した「脱ダム」宣言に基づき県営ダム計画を中止した浅川(長野市−上高井郡小布施町)の治水をめぐっては、19日にも県と国土交通省が河川整備計画をめぐって協議したものの、合意点は見いだせていない。
 危機的な状況が続く県財政については、本年度が期限となっている財政改革推進プログラムを来年2月までかけて作り直す方針だが、議論はこれからだ。
 自身が「県政改革」として方向性を示した課題の中には、解決策が先送りされたまま、8月末の知事任期を超えた取り組みが不可欠となっているものが少なくない。こうした課題に、自身はどう責任を果たそうと考えているのか−。「決めていない」と繰り返す知事の発言から、姿勢はみえてこない。
【写真説明】塩尻市の知事室分室で定例記者会見する田中知事。知事選に向けての真意はまだ見えない=26日


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