信濃毎日新聞ニュース特集

どうする高校改革

新校名ほぼ出そろう 理念・願い込めた名前多く
2013年1月 9日掲載

 少子化などを理由に県教委が2005年度から進める県立高校再編で、新校の学校名が昨年12月にほぼ出そろった。地名の後に理念や願いを込めた文字が加わり、普通科か職業科があるか一見して分からない校名が多い。校名を決める過程からは、統合で閉校する高校がある中で、その歴史や新校への期待を名前に託そうとする卒業生や住民の思いが見えてきた。

 須坂園芸高校(須坂市)と須坂商業高校(同)が統合して15年度に設置される新校の準備委員会は昨年12月、新校名を「須坂創成(そうせい)高校」に決めたと発表した。住民代表や両校OBら16人でつくる校名選考委員会が444件の応募の中から選んだ。

 新校では、2校から引き継ぐ商業科と農業科に加え、地域の要望で創造工学科をつくる。3科の壁を越えて学べるのが特徴。同委員会は「新しい時代を切り開いて、産業や文化を創り出す人材育成を目指す新校にふさわしい校名」と結論を出した。

 同委員会長で前信濃教育会会長の宮本経祥(つねよし)さん(79)=須坂市=は、「子どもたちや新校への願いが自然とあふれていた」と1年間に及んだ議論を振り返った。委員たちは、候補名の漢字一つ一つの意味を辞書で調べたり、応援団が応援しやすいかどうか―と実際に発音して確かめたりと熱心に研究。「商業や園芸の名前を少しでも残したいという意見はまったくなかった」

 「高校再編の新校に、願いが託された校名が多いのは理解できる」。大町高校(大町市)と大町北高校(同)が統合して16年度開校予定の新校の校名選考委員会で委員を務める下坂一俊・大町高校長(60)はそう話す。

 同委員会で両校OBや地域住民ら13人と議論を重ねるうち、「新校名に理念や願いを込めることは、二つの学校が形の上ではなくなることで錯綜(さくそう)する大勢の人の思いを集結させることにつながる」と感じた。

 同委員会は昨年12月、公募で寄せられた案から、新校名の候補を「大町英峰(えいほう)」「大町岳陽(がくよう)」「大町秀嶺(しゅうれい)」「大町北稜(ほくりょう)」「大町明峰(めいほう)」の五つに絞った。「新校に対する地域の期待や願いを表した結果」と下坂校長。3月末までに2回の会合を開き、校名を最終決定する。

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 県内の県立高校名は従来、地名そのものか、地名に方角や学科などを組み合わせるのが通例だった。2000年度、県内初の総合学科への移行に合わせ、塩尻高校が塩尻志学館高校と名称変更。「志学」は論語に由来し、県と県教委が発表した際、県教委は「理念を込めたのは珍しい」とコメントしている。

 05年度に始まった高校再編では、新校名は県教委が決めるのではなく、案を募り、統合対象校の卒業生や住民が議論して決めるようになった。07年度開校の高校には、「中野立志館」「丸子修学館」「木曽青峰」などがあり、08年度には「箕輪進修」が誕生する。

 公立高校では全国で初めて校名にアルファベットが入る飯田OIDE(オーアイディーイー)長姫高校の名も、こうした議論から生まれた。飯田工業高校(飯田市)と飯田長姫高校(同)が統合して13年度に開校する。OIDEは飯田工業高校の建学精神で、「独創(オリジナリティー)、想像(イマジネーション)、工夫(デバイス)、努力(エフォート)」の英語の頭文字から取った。長姫の文字とともに両校の伝統を継承する思いが込められている。

 中野高校と中野実業高校との統合で07年度に開校した中野立志館高校(中野市)の校名は、中野市出身の高野辰之が作詞した唱歌「故郷(ふるさと)」の一節「志を果たして いつの日にか帰らん」が基になった。

 中野高校同窓会と中野実業高校同窓会は、中野立志館高校が初めて卒業生を送り出した10年に「OBが一体となって母校を盛り上げよう」と統合して同校同窓会を発足させた。

 そこでは、同校1期生の3人が大先輩たちに交じって役員として活動する。その一人で調理師の清水信吾さん(21)=中野市=は、「新校になって校名や学科が変わっても、中野高と中野実業高の伝統は日々の授業に生きていた。両校の伝統を受け継ぐことで中野立志館の個性を育んでいきたい」と話した。


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