信濃毎日新聞ニュース特集

どうする高校改革

魅力ある高校を考える好機に 諏訪地方の懇談会設置へ
2006年9月30日掲載

 県教委は、岡谷東高校と岡谷南高校(ともに岡谷市)を対象にした統合計画について、県会臨時会での関連議案否決を経て「凍結」することを決めた。反対運動を続けてきた両校関係者には「あくまでも白紙撤回を求めるべきだ」との意見も根強いが、当面の統合が回避できたことに安心感も広がる。ただ、高校再編の目的の一つだった「魅力ある高校づくり」は引き続き追求していく必要があり、あらためて諏訪地方全体の問題としてとらえ直す姿勢が求められる。
 「凍結されてほっとしているが、いつ『解凍』されるか不安が残る」「県教委の意図が見えない」。岡谷東高で28日夜開いた「岡谷東高校の存続と発展を図る実行委員会」の会合。経過報告後の意見交換で、メンバーである同校同窓会やPTAの役員ら約20人の口から出たのは、安堵(あんど)と不安が交ざった言葉だった。
 今後の両校の統合計画ついて、県教委は「統合の是非や新たな計画策定の必要性などを各方面の意見を聞きながら検討する」と説明。計画の変更に含みを持たせている。ただ、昨年11月に第3通学区(南信)の高校改革プラン推進委員会で統合案が急浮上して以来、統合反対の署名や陳情に奔走してきた両校の同窓会やPTAら地元関係者に県教委への不信は強い。
 岡谷東高3年の花岡梨香さん(18)は生徒会副会長として反対運動の先頭に立った。凍結を喜びながら「県教委に相手にしてもらえず、つらい1年間だった」と振り返る。しかし、「自分たち生徒や学校が、地域の多くの人に支えられていると知った。大切な経験になった」と話す。岡谷南高同窓会の浜富夫会長も「けがの功名ではないが、統合問題をきっかけに、同窓生たちの愛校心の深さを知ることができた」とする。
 ただ、両校の統合に反対した関係者の中にも「少子化が今後も進めば、十数年後は諏訪地方でも高校の削減は避けられない」との見方があるのは事実。高校改革プラン推進委でも、諏訪地方の課題として、中学卒業生が中信や県外の進学校に流出していることや、定員割れが続く高校があることなどが挙げられた。諏訪地方の高校再編は当面なくなったが、「魅力ある高校づくりが最大の課題として残った」とする声は多い。
 諏訪地方のある中学校の進路指導担当教諭は「中学生や保護者に、今回の高校再編によって諏訪地方の高校教育が活性化するのでは―と期待する声が少なくなかった」と話す。特に「入学してからの目標や目的が見えにくい普通高校の存在が問われた」と指摘。今回を契機に、高校側もこれまで以上に地域や中学校の要望を聞きながら特色づくりに取り組んでほしい―と注文する。
 こうした声を受け、具体的な動きも出ている。諏訪地方6市町村の教育委員長や教育長、中学や高校の校長らが年内にも、地域の中学高校教育について論議する「中等教育懇談会(仮称)」を設置する予定だ。設置準備を進める岡谷市の北沢和男教育長は「魅力ある学校づくりを諏訪地方全体の課題として共通理解を持ちながら、大いに議論する場にしたい」と意気込む。議題によっては保護者や生徒、地域住民にも参加してもらう考えだ。
 受験する中学生や入学した高校生にとっての魅力ある高校とは何か。統合計画が「凍結」された今が、じっくり考え始める好機でもある。


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