信濃毎日新聞ニュース特集

どうする高校改革

どう描き直す 県会本会議の採決に県教委は
2006年9月16日掲載

 来年度入試が半年後に迫る中、県会は15日の臨時県会本会議で、県立高校の統廃合に関する9議案のうち6議案を否決した。短期間での再編実施にこだわり続けた県教委は、「進め方が拙速」との県会側の批判をどう受け止めるのか。県会側は、生徒数の減少といった現実を踏まえ、望ましい改革の方向をどう見いだしていくのか−。住民参加の下で、あらためて「高校改革」の具体像を描き直していく努力が関係者に求められている。
<県教委へ批判相次ぐ>
 「拙速なやり方は、地域の理解はおろか、むしろ反発を招いている」。本会議の委員長報告で、文教委員長の西沢正隆氏は県教委の姿勢を批判した。採決前の討論でも賛成、反対の両立場の議員から、県教委の進め方への批判が相次いだ。
 県教委が教育委員会定例会で、現在89ある県立高校を14校削減する「目安」を提示したのは2005年5月。同月には4通学区ごとに地元住民らが統廃合問題などを話し合う「高校改革プラン推進委員会」が発足し、わずか1カ月後には県教委臨時会で、再編対象校の具体名が「議論のたたき台」として公表された。
 「県教委が十分説明せずに具体名を挙げ『なぜ削減なのか』が議論の中心になってしまった。地域や関係者が教育課程の充実など、本質的な議論をする機会が失われた」。県会全会派でつくる高校改革プラン研究会の柳平千代一会長は指摘する。
 対象校の生徒や同窓会、地元住民らの多くからは強い反対の声が上がり、計画撤回を求める運動も続いた。県会は昨年の6月定例会で、県教委に高校再編案の白紙撤回を求める決議案を可決。今年8月の知事選では「地域合意のない計画は白紙とする」と主張した村井仁氏が当選し、8月末には丸山〓教育長が田中康夫前知事の退任とともに辞職するなど、計画をめぐる環境は大きく変化した。
 県教委は村井知事就任後の今月6日、計画の一部延期を決めるなど「妥協」を図ったものの、県会側は「理由も明確でなく、泥縄の対応だ」との不信を強める結果に。柳平氏自身は「将来のため高校再編は必要」として07年度実施の7議案に賛成したものの、「ボタンの掛け違いでできた溝は埋められなかった」と振り返る。
<地域交え議論不可欠>
 今県会を経て、県教委が推進してきた再編実施計画は、中野と中野実(ともに中野市)など一部のみが実現する形となる。「高校改革」の全体像が今後どうなるのか、現状では極めて不透明となり、受験生や保護者には不安も生じている。
 県会内などに「教育委員の責任は避けられない」と指摘する声も出る中、県教委は20日の定例会で、今後の対応を話し合う方針だ。松田泰俊委員長はこの日、本会議後の記者会見で「(再編に向け)一歩を踏み出したことで、道は開けた」と前向きに受け止めたものの、再編実施計画の今後の取り扱いについては明言しなかった。
 一方、本会議後の記者会見。村井知事は「生徒が減っている現状は直視しなければならず、県の財政が厳しいことも十分認識している。高校再編は避けて通れない」と述べ、議論の仕切り直しの必要性を強調した。
 県教委によると、県内の公立高校入学者数は1989年の2万8000人余をピークに、06年は約6割の1万7000人余まで減少。19年には1万5000人になる試算だ。
 こうした「現実」をどうとらえるか−。この日傍聴席で採決の様子を見守った、「県立高校の発展と存続を願う会」の久保田元夫代表世話人。県会の判断は当然とする一方で「これからは地域も責任を負って議論をしていかなくてはならない」とも語った。
(〓はりっしんべんに晃)


<前の記事 どうする高校改革 トップ 次の記事>

掲載中の記事・写真・イラストの無断転用を禁じます。
Copyright© 信濃毎日新聞 The Shinano Mainichi Shimbun