信濃毎日新聞ニュース特集

どうする高校改革

条例改正提案当日に慎重論一変 「再編撤回」立場通す
2006年7月 1日掲載

 高校再編の一斉実施を回避するために共産党が6月県会で提案を準備していた高校設置条例改正案は30日、自民党が提案者に加わり、37人が賛成署名して可決の見通しとなった。法律との整合性などを疑問視する慎重論もあった県会だが、発議書提出期限の同日になってムードが一変。再編案の白紙撤回を求めてきた立場を維持し、知事選に向けて対決姿勢を鮮明に打ち出した形だ。
 前日までの慎重論が吹き飛んだのは同日午前。条例案などへの対応を決める自民党県議団の会議で、共産党案に賛成論が相次いだ。「一貫した姿勢を示すことで、知事選へ向けて知事との関係が県民に分かりやすくなる」と自民党県議の一人。県会10会派でつくる前日の高校改革プラン研究会で「継続審査という方法もある」と発言した平野成基氏も「悩んだが、この選択は県民に分かりやすい」と話した。
 改正案には慎重な意見も多かった。法律上、教育機関の設置や管理、廃止は教育委員会が職務権限として執行すると規定され、生徒の定員は「県教委が別に」定めるとされている。松田泰俊・県教育委員長は29日の一般質問で「(条例案は)県教委の職務権限を侵す恐れがある」と答弁。募集停止決定を県会が下すことに「責任が重い」という声もあった。
 しかし、「地域合意を得ていない統合をストップさせ、地域や現場の混乱を解消するには、このタイミングでの条例可決しかない」(西沢正隆氏、政信会)との声が強まった。知事選を前に議会が高校再編を追認するような形で「背中を向けるわけにはいかない」(賛成署名した県議)の論理も働いたようだ。
 執行権との兼ね合いなどの論議はこれからだ。共産党の石坂千穂団長は「募集定数の決定を議会がするのではない。廃止につながる募集停止を承認するので、職務権限は侵さない」とする。一方、署名しなかった清水保幸氏(志昂会)は「(改正案に)地元の期待はあるが、慎重に検討しなければならない課題もある。可否はその後、決める」と話す。
 可決された場合、知事が再び審議を求める「再議」に付す可能性もある。その場合、改正案可決には再び過半数の同意が必要だ。そうしている間に、中学生の体験入学前に募集停止の結論を出せるかどうかなど、不確定な要素も残る。
 県教委の米沢修一教育次長は「対象校では4月から検討を続け、体験入学も迫る。現場に混乱がないよう文教委員会で説明して理解を求めたい」と、引き続き一斉実施を訴える構えだ。


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