信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

「雨が降るたび怖い」岡谷の被災者 発生から1カ月
2006年8月19日(09:59)
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 7月豪雨災害の発生から19日で1カ月。土石流により8人が亡くなった岡谷市湊、川岸地区では、住宅地に流出した大量の土砂や倒木が撤去され、家屋の修繕も進んでいる。平穏を取り戻したかに見える被災地だが、再び土石流に襲われる不安は消えず、生活再建の支援策も十分とはいえない。被災住民の災害との闘いは続いている。
 今月12日正午ごろ、諏訪湖周辺の上空を黒い雲が覆い、雷鳴がとどろいた。雨脚が強くなった午後1時、岡谷市は7月豪雨で土石流が起きた湊、川岸の両地区を中心に、初めて避難準備情報を発令。湊地区の避難所になっている湊小学校に近くの主婦(65)が息子の車に乗って自主避難してきた。身を寄せていた上田市の長女の家から約3週間ぶりに帰宅したばかり。避難勧告が出る前だったが「早めに避難した方が安全と思って」と空を見上げた。
 市は豪雨災害後、土砂災害の恐れがある11河川の下流域716世帯に、それほど激しくない降雨でも避難準備情報や避難勧告が出せる新基準を定めた。対象河川の上部には県が大型土のうを設置したが、応急処置にすぎないためだ。
 自主避難した主婦は災害発生時、土石流が押し寄せた自宅からはだしで飛び出し、家の裏の土手をはい上がって逃げた。この日の避難準備は発令から3時間近く後に解除されたが、「同じ場所に住む限り、雨が降るたびに怖がらないといけない」と嘆いた。
 県は災害現場上部の谷や沢で砂防ダムなど恒久工事に早急に着手する予定だが、完成まで1年はかかる見込み。被災住民の中には、貴重品や着替えを入れたリュックサックを枕元に置いて寝たり、家族の人数分の懐中電灯を用意する人もいる。
 市は、保健委員を通じて被災者の精神状態の把握に努める方針。自らも避難生活を経験した保健委員の女性は「自宅に被害もなく、避難所生活も1日で済んだ私でも、今も寝るときに精神安定剤を飲んでいる」と明かす。「被災者が抱える不安は深く大きい。話を聞くことで、いくらかでも慰めになるといい」と話した。
【写真説明】7人が亡くなった岡谷市湊の土石流災害現場。土石流の勢いを弱めるために設置された大型土のう(奧)が並ぶ=18日午前


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