信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

「老後の蓄え充てるしかない」足りぬ住宅改修費
2006年8月19日(09:58)

 「老後に病気をしても困らないように蓄えてきたお金を充てるしかない」。土石流で全壊した湊地区の自宅の改築を決断した60代男性は、今後の資金繰りを考えると切なくなる。
 木造2階建ての自宅は、山側に面した柱がすべて折れた。既に知り合いの建設業者に工事を依頼。妻と息子の家族3人で、避難所生活後に移った近くの借家から再び自宅に戻る日を待つ。しかし、年金生活に入った数年前、保険料を節約するため、自然災害を対象にした住宅の保険は解約していた。改築への行政の支援がどうなるか気にかかる。
 災害後に県が同市など3市2町に適用した被災者生活再建支援法により、全壊世帯には「居住安定支援経費」として最高200万円、大規模な補修をしなければ居住が困難な半壊世帯には同100万円が支給される。しかし、この男性は「ありがたいが、200万円としてもとても足りない」と嘆く。
 しかも、この経費は住宅の解体費や建て替えのローンの利子などに使途が限定され、被災住宅の改修自体には使えない。所管する内閣府の担当者は「個人の財産形成を公費で負担するのはふさわしくない」と説明する。
 市内にはこのほか、「大規模」の条件に当てはまらない半壊や一部損壊、床上床下浸水の被害の住宅が275戸に及ぶ。これらは支給対象にさえならない。住民からは「被災者の気持ちが分かっていない制度」との声が上がる。
 市復興対策室の長尾恒一室長は「支援法では(対象から)外れてしまう人が出てくると認識している」とした上で、「条件を緩やかにした市独自の支援策をできるだけ早くまとめる」としている。


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