信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

諏訪地方6市町村 夏祭り中止 豪雨被害小さい地域も
2006年7月30日(10:21)

 豪雨災害で大きな被害を受けた地域だけでなく周辺の市町村にも市民祭りなどのイベントを中止する動きが広がり、諏訪地方では全6市町村で市民祭りが開かれなくなった。「近隣の被災者の気持ちに配慮すべき」というのが理由だ。災害時の住民意識や行動に詳しい専門家からは「自粛ムードが行きすぎると地域はより沈みがちになる」との指摘も出ている。
 諏訪地方は豪雨災害の被害が岡谷市、諏訪市、諏訪郡下諏訪町の諏訪湖周地域に集中。19日の災害の翌日には真っ先に諏訪市で市民祭「第27回諏訪よいてこ」などのイベントの中止が決まり、その後も、岡谷市の「岡谷太鼓まつり」や下諏訪町の町民祭りのテストイベントなどが相次いで中止になった。
 被害が比較的小さかった八ケ岳山ろく(岳ろく)地域にも同様の動きが広がった。同郡富士見町の町民祭り「富士見OKKOH(オッコー)」実行委員会では、窪田福美委員長が「近隣市町が大きな被害を受けている」などとして中止を提案。「富士見が中止すると、(同じ岳ろくの)茅野市や原村にも影響する」との声も出たが、提案を受け入れた。
 この声の通り、茅野市の「茅野どんばん」も祭典・実行合同委員会で「(諏訪地方の)仲間が被害に遭っているのに、楽しく踊っていていいのか」と意見が出て、1982(昭和57)年の豪雨災害以来、中止に。「原村よいしょまつり」も、同じ理由で中止が決まった。
 自粛ムードを、茅野市内の男性は「祭りをやりたいと思っても、言いづらい雰囲気になっている」と危惧(きぐ)。富士見町の店員女性は「祭りの出し物の練習をして楽しみにしていた子どもたちはかわいそう。祭りで義援金を募ることもできたのでは」と話す。
 群馬大の片田敏孝教授(災害社会工学)は「被災地を思いやる心情から出てくることだが、災害時はイベントなどの開催に反対意見が出れば、それが勝る状況になりやすく、連鎖的に自粛のムードが広がる場合がある」とした上で、「イベントには沈みがちな状況を元気づける面もある」と指摘している。


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