信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

室内にも土砂や倒木 一時帰宅の住民「これからが大変」
2006年7月24日(09:26)
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 土砂が室内に入り込み、倒木に外壁が崩されるなど変わり果てた姿のわが家に、災害から四日ぶりに戻った住民たちは息をのんだ。岡谷市災害対策本部が23日、19日の土石流で被災した湊地区の137世帯に許可した一時帰宅。比較的被害の少なかった住民も現場に残る大量の土砂や倒木を前に「再び生活が戻るのはいつになるのか」と漏らした。
 外壁を突き抜けて室内に侵入した倒木が、2階への階段に突き刺さっている。厚さ20センチほどの土砂が残る1階の床は、重そうなピアノが横倒しに。室内の壁には、流れ込んだ土砂で、隣の部屋が見えるほど大きな穴が開いている。「これでは再び住めると思えない。ひどすぎる」。土砂にまみれた自宅を両親と一時帰宅で訪れた小口裕樹さん(29)は悔しそうにつぶやいた。
 この日の一時帰宅は、午前と午後に分けて実施。午前8時すぎ、53世帯155人が避難所となっている同市湊3の湊小学校から、世帯ごとに警察官や市職員に付き添われ自宅に向かった。所々に厚さ30センチほどの泥が残る道路を慎重に進んで自宅に着いても、まず玄関口にたまった土砂をスコップで取り除かないと家に入れない。2階のベランダや屋根に、はしごをかけて窓から入る住民もいた。
 湊小を出発する際、対策本部が「現場上部に設置した土石流センサーのサイレンが鳴った場合の逃げ道を家族内で決めておいてほしい。持ち帰る荷物も、持って走れる小さなものに限定して」と警告。自宅で貴重品や家族の着替えをバッグに詰めたり、電気が止まり冷蔵庫の中で腐った食料をごみ袋に入れる住民の作業にも緊張感が漂った。帰宅時間の正午を待たず、30分で戻る住民もいた。
 中央道の高架に近い自宅に妻と戻った中西孝さん(48)は、1階の一部が浸水した程度で「思ったより無事」と、玄関先で抱き合って喜んだ。
 ただ、家の前には大量の泥に加え、倒木や岩、流された自動車などが積み重なる。中西さんは「避難勧告が解除されたとしても、これからが大変。友達が片付けを手伝ってくれると言ってくれているが…」と不安そうに話した。
【写真説明】一時帰宅した自宅を片付ける住民ら。室内には大量の土砂が流入している=23日午前9時半、岡谷市湊3


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