信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

「娘が…」母悲痛 辰野 遺体を前に泣き崩れ
2006年7月22日(10:52)
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 土砂の下から見つかった遺体に、家族は泣き崩れた。豪雨災害で19日、鉄砲水や土砂崩れに巻き込まれて行方不明になっていた上伊那郡辰野町伊那富の辰野中2年根橋清香さん(13)と、同町小野の小沢矩子さん(67)が21日、相次いで遺体で見つかった。捜索に当たった人や知人らも、悲しみに包まれた。
 根橋さんは午後6時前、鉄砲水に巻き込まれた現場付近で、約50センチの土砂の下にうつぶせで埋まっているのが見つかった。19日午後、「増水の様子を写真に撮りたい」と言う清香さんと一緒に出掛け、ともに押し流されて負傷、入院中の父代治さん(47)の記憶に基づき、付近を捜索していた。消防署員らが手で土砂を取り除き、遺体を掘り出した。
 母尚美さん(46)は、青いシートで囲われた娘の遺体を前に、泣き崩れた。捜索に当たった全員に「娘がやっとわが家に帰ってくることができます。本当にありがとうございました」と頭を深く下げた。祖父辰男さん(77)も「ありがとう、本当にありがとう」と一人一人に頭を下げた。その傍らで、兄と姉は「本当に死んじゃったんだね。いつでも3人だったのに」と抱き合って泣いた。
 近くの住民は「毎朝、大きな声であいさつしてくれた」「本当に仲のよい家族だったのに」と肩を落とした。
 小沢さんは午後5時半前、自宅敷地内の畑に流れ出た土砂の中から遺体で見つかった。この日は自衛隊員や地元消防団員など約130人が、倒壊した母屋と畑周辺で重機も使って捜索していた。
 小沢さんは町農業委員を務め、地域活動も活発だったという。自宅裏山が崩れた19日は、河川のはんらんを警戒する地元消防団員らの炊き出しに参加。帰宅して間もない午前10時すぎに土砂崩落に巻き込まれた。
 大阪から駆けつけた長男浩一さん(44)は「世話好きだった母の安否を心配した同級生も見舞いに来てくれた。残念です」。近所の小沢さと志さん(70)は「頼りがいがあっただけに、ぽっかり穴が開いたようで寂しい」と話した。
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 上田市で行方不明になっている同市新町、新聞配達員小林正子さん(57)の捜索が続いた同市の産川。前夜から増水したため、捜索態勢は縮小された。終日待機した新町自治会副会長の岡田宝正さん(58)は「小林さんは、妻のバレーボール仲間。何とか捜し出したい」と話した。
【写真説明】捜索に当たった人に泣きながらお礼をする根橋清香さんの家族=21日午後6時10分、辰野町伊那富


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