信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

岡谷の土石流なぜ発生 斜面が「かゆ状」に
2006年7月21日(09:27)
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 岡谷市湊で19日、複数の死者、行方不明者を出した土石流は、地元住民によると「通常、水の流れがない谷」で主に発生していた。被災した住宅地を流れる小田井沢川流域は、国土交通省の砂防指定を受け、県の土石流危険渓流にもなっているが、これとは別の谷だ。20日、現地を調査した専門家は、多量の雨が降り続き、粘土質の斜面が豪雨で「かゆ状」になって崩れたとの見方を示している。
 土石流が発生したのは住宅地から約1キロ上流の林の中の谷筋。地元住民は「はげ山でもないのに、どうしてあれだけ水が出たのか」と不思議がる。
 20日、土石流の発生地点を調査した信大農学部(上伊那郡南箕輪村)の北原曜教授(治山学)は、6カ所の崩落を確認した。それぞれ、約20メートル四方、深さ約3メートルの範囲で崩れていたという。
 現場の地質は、火山灰が堆積(たいせき)、風化してできたとみられる粘土質の表土が2―3メートルあり、その下に固く水が浸透しにくい「難透水層」があるという。18日夜から19日早朝にかけての豪雨で、緩んだ表土が難透水層の上を滑り落ちたとみている。
 北原教授によると、土砂崩落は通常、傾斜30―40度の急斜面で起きやすいが、現場の傾斜は25―30度ほど。谷も10度ぐらいの緩やかな傾斜だが、「かゆ状となり流動性が高まり、谷底にたまっていた土砂を巻き込み、規模を増した」とみている。
 信大の北沢秋司・名誉教授(治山・砂防学)も「地盤の保水能力を超える雨が降り、土の層が切れる『剪断(せんだん)破壊』が起きたのでは」と指摘している。
 現場は、市の防災マップでも「危険な渓流」として示されているが、市が区域に避難勧告を出したのは、土石流の発生覚知後、2時間近くたってからだった。竹沢幸男助役はこれまで被害がなかったことから「想定できなかった」と話した。
 北原教授は「現場は『崩れ残り』が見られる。今後まとまった雨があれば、再び土石流が発生する危険性が高い」と警戒を呼び掛けている。
【写真説明】土石流が発生した岡谷市湊の現場=19日午後1時47分


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