信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

力尽くし徹夜捜索 何とか助かって… 現場ひどい状況
2006年7月20日(15:29)
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 豪雨災害で行方不明者が出ている岡谷市、上田市、上伊那郡辰野町では20日も懸命の捜索が続いた。「無事でいて」。消防団員らは疲労の色をにじませながらも懸命に作業。同郡箕輪町の天竜川決壊現場では、激しい濁流を見ながら堤防の復旧が進められた。
 5人の遺体が見つかり、依然行方不明の2人の捜索が続く岡谷市湊の土石流災害現場。「疲れたなんて言ってられない。やらなければ先に進まない」。ほぼ徹夜で作業を続ける地元消防団の分団長花岡義樹さん(46)は20日午前、力を振り絞るように話した。
 所々で濁流が流れる中、重機が木や石を取り除く。そのそばで、消防署員や自衛隊員らは、泥の中にゾンデ棒を刺す作業を黙々と繰り返した。
 湊地区の住民ら約170人が避難した湊小学校体育館では同日朝、豪雨災害を報じた信濃毎日新聞が配られた。小口富久さん(50)は、土砂が自宅に押し寄せている様子をとらえた空撮写真を見ながら「本当に大変だった」とつぶやいた。
 上田市手塚の産川に19日朝、軽自動車ごと転落したとみられる同市新町の新聞配達員、小林正子さん(57)の捜索は20日午前、現場から千曲川合流点までを中心に再開。上田署や上田広域消防本部、地元住民、市消防団員らがとび口やスコップを手に、川岸や川の中を歩いて捜した。
 産川沿いの市道陥没現場近くに住む滝沢幸隆さん(50)も参加した。19日朝は新聞が届かず、小林さんが自分の家に配達に向かったところで事故に巻き込まれたと推測し、つらそうな表情。「無事にどこかにいてほしい」と願った。
 辰野中学2年の根橋清香さん(13)が鉄砲水に流された上伊那郡辰野町小横川では午前10時すぎから、消防署員や地元住民ら約60人が棒で土砂を探って捜索。重機を入れるため、土砂に埋まった倒木の撤去も進めた。
 母親の尚美さん(46)は涙を浮かべ、「現場の状況がこんなにひどいとは思わなかった。見つかるか心配」。祖父の辰男さん(77)は「何とか助かってほしいが…」と肩を落とした。
 一方、堤防が決壊した上伊那郡箕輪町松島区北島の天竜川右岸。20日午前、水位は前日より下がったが、濁流は依然、決壊部分を洗う。
 国土交通省天竜川上流河川事務所(駒ケ根市)によると、水際に積み上げた大型コンクリートブロックは約400個。高圧線鉄塔の転倒防止を最優先に、ワイヤでコンクリートブロックに縛り付けた。「まだ水の勢いは強い。これ以上、土台が洗われないといいが…」と東京電力の担当者。
 様子を見に来た近くの農業男性(66)は「また雨が降り出すという予報だから心配」と話した。
【写真説明】重機で復旧作業を急ぐ箕輪町松島の天竜川堤防決壊現場=20日午前8時半


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