信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

押し寄せた倒木と土砂 岡谷の現場、夜を徹し捜索
2006年7月20日(09:25)
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 土石流、堤防決壊、高速道への土砂流入…。活発な梅雨前線の影響に伴う豪雨は十九日、諏訪地方や上伊那地方を中心に県内各地に大きなつめ跡を残した。河川はんらんの恐れで避難勧告が続くほか、交通網が寸断されホテルで宿泊客が足止めを余儀なくされるなど、被災地の住民の不安は高まった。
 捜索場所近くに設けられたテント張りの指揮本部に午後二時すぎから、次々と遺体発見の知らせが無線で飛び込んだ。岡谷市湊で発生した土石流被害の現場。地元消防団のほか、自衛隊員や近隣の広域消防隊員ら約三百人が土砂と倒木が積み重なった場所で、夜を徹して懸命に不明者の捜索を続けた。
 遠くから作業を見守る地元住民らの姿も。自宅一階が土砂で埋まった小口秀文さん(46)は「いつ家に帰れるのか」と漏らした。日が落ちてからも捜索活動は続けられ、消防隊員らは投光器の明かりの中で土砂を掘り返した。
 「午前四時前から、家の前の側溝を転がる石の音がうるさかった。今になって思えば、土石流の前兆だったのか」。自宅が土砂で埋まるなどの被害に遭った住民の多くが口をそろえる。
 小口勝由さん(75)も午前四時前、自宅の外で岩がぶつかるような、ゴトゴトという音を聞いた。「心配になって玄関先から外を見ていたら、そのうち倒木の交じった土砂が道路沿いに押し寄せてきた」。自宅にいた家族や近所の人たちに逃げるよう大声を上げながら、近くの高台にある寺に走って避難した。
 同市川岸東二では鉄砲水で家屋が流され、林孝幸さん(75)が遺体で発見された。鉄砲水の発生直前に、林さんの妻から電話で連絡を受けた近くの高林富美さん(65)は「『水があふれてきている。どこに連絡すればいいか分からない』との奥さんの声のすぐ後、ゴーというものすごい音とともに自分の家に水が入ってきた」。
 林さんの捜索は雨が降りしきる中、自衛隊や地元消防団などがスコップや鉄の棒などを手に、ひざ上まである泥を掘り起こしたり、突いたりしながら続いた。捜索に加わった近くの花岡末博さん(73)は「騒ぎに気付いて外に飛び出したら、林さんの家がなくなっていた。すぐに周辺を近所の人たちと一緒に必死に捜したのだが…」と泥だらけのかっぱ姿で話した。
【写真説明】雨の中、懸命に行方不明者の捜索を続ける自衛隊員=19日午後10時35分、岡谷市湊


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