信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

濁流の天竜川「怖い」 深夜避難の住民緊迫
2006年7月19日(09:39)
伊那市の中央区公民館に避難した人たち=18日午後11時

 梅雨末期の大雨が18日、県内各地で県民の暮らしを直撃した。天竜川は上伊那で増水し、濁流が橋げたに迫った。「まさか自分が…」。避難指示や勧告を受けた住民は言葉を失い、不安が広がった。
 19日午前零時半、伊那市中央区から双葉町の天竜川は、川幅いっぱいに濁流が音を立てて流れ、水位は目測で堤防まで約2メートルに迫っていた。地元消防団の車が川沿いをパトロールし、毛布や食糧を持って避難するようスピーカーからしきりに呼びかけていた。
 避難指示が出された上伊那郡南箕輪村北殿区。公民館には布団や着替え、貴重品などを手にした約100人が避難。住民は床に毛布を敷いて横になったり、不安げな表情で話し込んでいた。
 家族5人で避難したという高校2年生男子(17)は「学校帰りに濁流の天竜川を見て心配していたが、まさか自分が避難するとは思わなかった。いつ帰れるか分からないし、とても不安」。会社員男性(38)は「ひとごとだと思っていたが、避難するよう言われて驚いた。とにかく布団や貴重品を持って避難した」と話した。南殿公民館には約50人の住民が避難した。
 伊那市の中央区公民館には午後10時50分、約60人が自主避難。区長代理の下島賢治さん(64)は自分のトラックにスピーカーを付け、地域を回って避難を呼びかけたという。息子と2人暮らしという女性(70)は「伊那に40年近く住んでいるが避難は初めて。天竜川が近いので怖くて」。
 塩尻市楢川支所は、土砂崩れの危険性が高いとして、奈良井の国道19号土砂崩れ現場近くの5世帯に避難を勧め、一部住民が近くの奈良井公民館に避難した。百瀬忠久さん(77)は「山ぎわえん堤で土砂は止まっているが、水が大量に家の前まで流れ込んだ」と話していた。現場では市職員や地元の消防団員たちが警戒を続けた。
 JRの運休も拡大。松本市のJR松本駅では、仕事で訪れた都内の会社員女性(22)が、長野市で1泊して新幹線で帰京するよう会社から指示を受け「これからホテルの手配をしなければならない」と困惑していた。

【写真説明】伊那市の中央区公民館に避難した人たち=18日午後11時


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