任期満了に伴う知事選は5日、17日間の選挙戦の最終日を迎えた。届け出順に、新人で前自民党衆院議員の村井仁氏(69)=長野市=は小諸市から、現職で3選を目指す田中康夫氏(50)=北佐久郡軽井沢町=は東筑摩郡麻績村から、それぞれ「最後の訴え」をスタート。真夏の日差しを浴びながら、遊説や街頭演説で有権者に支持を呼び掛けた。
<村井氏 対話通じ物事進める>
村井氏は午前8時前、しなの鉄道小諸駅前に乗用車で到着。運動員の女性にたすきを掛けてもらい、集まった支持者一人一人の手を両手で握った。「頑張ってください」などと声を掛けられると、「ありがとう。頑張ります」と日焼けした笑顔で答えた。
最終日の心境を報道陣に尋ねられると「長野県は広い。本当に時間がないとしみじみ感じています」と表情を引き締めた。選挙カーに乗り込むと、拍手に見送られて出発。支持者の農業男性(62)は「人の話に耳を傾ける姿勢がいい。いよいよだな。もう一踏ん張りだ」と力を込めた。
市内を遊説後の午前9時、佐久浅間農協小諸支所の駐車場で街頭演説。「私の考えはただ一つ。みなさんの話をうかがいながら、対話を通じて物事を進めていく。私は独裁は嫌です。自分の気に入らないことはやらない、そんな県政はやめましょう」と声を強めた。
この6年間、県内景気が停滞したとも主張、「こんな県に誰がしたという思い。経済を良くするため頑張る」。駆け寄る人とがっちり握手、手を振る人には大きな声で「ありがとうございます」と応じた。正午までに上田、千曲、須坂、長野の各市を駆け抜けた。
【写真説明】街頭演説に集まった有権者と握手する村井仁氏=5日午前9時5分、小諸市の佐久浅間農協小諸支所駐車場
<田中氏 地域担う志こそ原点>
田中氏は早朝、上水内郡信州新町や東筑摩郡生坂村でビラ配りをした後、同郡麻績村へ。午前8時、同村のJR聖高原駅前でこの日初めての街頭演説に臨んだ。
「目先のお金でなく、自分たちで地域を担うという志こそ自治の原点」と強調。「一つ一つの集落の中の自治。これが活性化してこそ、81市町村にいる220万県民の人間らしい営みができる」と訴えた。
少し離れて聞いていた子ども2人に駆け寄り、「君たちに借金の山は残しませんからね」。勢いよく選挙カーに乗り込み、「いよいよ明日が投票日。信州の未来を決める日」と遊説を始めた。
山間地の集落を走る車中から、福祉と教育の充実などをアピール。道路工事現場を通り掛かると「大きな東京の会社でなく、地元の建設業を育てます」と訴えた。
午前10時すぎ、松本市島内の住宅地に。声を聞いて自宅から出てきた元会社員の男性(62)は、候補者と握手を交わし「県政を身近にしたのは田中氏。今後も頑張ってほしい」と話した。
市街地を経て、松本駅前で街頭演説。有権者を見据え、県政運営の実績を強調した。正午すぎ、松本駅発の特急で長野市の篠ノ井駅へ向かった。
【写真説明】街頭演説の後、有権者に歩み寄り握手をする田中康夫氏=5日午前8時12分、東筑摩郡麻績村のJR聖高原駅前