信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
「政権構想」全体像 論戦通じて明確に(解説)
2006年7月20日掲載

 20日告示された知事選は、道州制論議や地方税財政の改革など、自治を取り巻く変化の中で、今後の県政運営を方向づける場だ。財政運営や「改革」の手法をめぐり、現職の田中康夫氏(50)、新人の村井仁氏(69)の立脚点の違いは鮮明だ。だが、県民生活をどちらがより良くしていくのか、まだ明確になっていない政策分野もある。今後の論戦を通じ、両氏は「政権構想」の全体像を示していく必要がある。
 告示前、信濃毎日新聞が行った立候補予定者の対論。最後に村井氏は「理念を現実のものにしていく時期に長野県は来ている」、田中氏は「信州モデルが今のような切り捨て型の国の施策をも変えていく」とそれぞれ語った。議論からは、新党日本代表として「改革」を全国に向けて発信しようとする田中氏、国の補助金なども活用し、バランスの取れた県政運営を目指す村井氏の基本姿勢が浮かんだ。
 ただ、今回の知事選は、両氏から体系的な政策・公約は示されないまま告示日を迎える、異例の展開となった。
 田中氏は、4年前の出直し知事選で60項目の政策を発表。うち55項目を施策化したとし、これまで提案した予算や条例案がマニフェスト(政権公約)だと述べる。だが、この4年間で県人口は自然減に転じ、合併で県内は81市町村に再編された。政策を評価・検証し、再構築して示す必要がある。
 村井氏は、将来の道州制への移行も見据え、県から市町村への権限や責任の移譲に積極的に取り組んでいく考えを示す。トップダウン型の判断が目立つ現職との対比を打ち出す戦略といえるが、選挙戦では具体的な政策課題に対し、リーダーとしてどう判断を下すのか、有権者に説明していく姿勢も問われる。
 知事選は、県政の現状を有権者が見つめ直す重要な機会だ。この4年間、知事と県会の対立には感情的な側面も目立った。17日間、候補者同士が議論をぶつけ合い、深めることで、県政の針路をめぐる論点が、議会とは別な角度から示されていくはずだ。(宮坂重幸)


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