信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
対照的な前哨戦 田中氏 集会なし 村井氏 組織づくり
2006年7月15日掲載

 20日の告示まで1週間を切った知事選で、事実上の対決構図となっている現職の田中康夫氏(50)と、新人で前自民党衆院議員の村井仁氏(69)が、対照的な動きを見せている。村井氏は14日、長野市で政治資金パーティーを兼ね、後援会「輝く81の会」の設立総会を開催。陣営は組織づくりを急ピッチで進め、村井氏も精力的に集会などをこなす。一方の田中氏は、12、13日と島根県で全国知事会議に出席。14日は長野市内で支援者と選挙態勢を協議したが、告示前に自身が出席する集会などは組まれていないという。これまでは「動」の村井氏に「静」の田中氏の様相だが、この日は互いを意識したとみられる発言や動きも垣間見えた。
 「県政が破壊されそうだ。これは止めないといけないと引き受けた」
 村井氏後援会の設立総会。会長に就いた県経営者協会会長(セイコーエプソン相談役)の安川英昭氏があいさつすると、出席者から拍手が起きた。
 この日は自民党国会議員や、田中氏の県政運営に批判的な県議のほか、村井氏を推薦した連合長野関係者、県職員OB、業界団体の役員ら約900人が出席。陣営は13日に市長を退任した腰原愛正・前大町市長を選対本部長に据え、県内20の地域別選対組織(支部)を発足させる。責任者には首長や県議が就き、県議らの後援会や連合長野加盟労組、業界団体などが活動を支える。
 立候補表明の翌週に当たる7月上旬以降、村井氏は県議の後援者らの集会に出席するなど、ほぼ毎日県内各地を回る。13日には長野市に住民票を移転。支援団体などのあいさつ回りも重ねるなど活発な動きが目立つ。
 これに対し、田中氏は10日の県会6月定例会閉会後も、連日知事としての公務が入っている。14日は部長会議や知事会見、国際交流員の退任式などの日程をこなした。
 会見では、村井氏の動きに「焦りは感じないか」との質問も出たが、「私はもともと(選挙で)団体回りや動員とは無縁の人間として生きてきた」と述べ、「組織型」選挙に一線を画す姿勢をあらためて強調してみせた。
 田中氏との対比で「組織型」と見られることを意識してか、村井氏はこの日、総会のあいさつで「改革を後戻りさせてはいけない。県民に開かれた県政を実現する」と訴えた。陣営は「既存の団体とともに市民グループとの連携も重視している」との姿勢だ。
 一方、田中氏はこの日、県の施策として、18日から市町村や広域連合、県民を対象に、県からの権限移譲の希望を募集する−と発表した。
 「市町村への権限移譲による基礎自治体の強化」は、村井氏が選挙公約の柱としている。村井氏陣営からは「なぜいまごろになって」(腰原氏)と、知事選に向けたアピールとの受け止めが広がったが、会見で田中氏は「別に他意はない。思い立ったら吉日、的確な認識、迅速な行動と言っているわけだから」と説明した。
 田中氏は公務後、知事選のために立ち上げた政治団体「しなやかな信州をはぐくむ県民の会」の事務所にも使う新党日本県第一支部事務所(長野市)へ。平山誠・同党総務局長や、知事後援会「しなやかな信州をはぐくむ会」の穂苅甲子男会長、「信州勝手連ネットワーク」事務局の武居博明・塩尻市議らと選挙期間中の日程などを協議したが「(具体的な内容は)まだつくっているところ」とする。告示日の20日も、午前中に県林業総合センター(塩尻市)の知事分室で部長会議と知事会見を予定。「第一声は会見が終わった後」(田中氏)としている。
 知事選では両氏のほかに、コンサルタント会社役員の峯正一氏(44)も立候補を表明している。


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