信濃毎日新聞ニュース特集「2006長野県知事選」
知事選「対立候補」動き増す 出馬要請に村井氏意欲
2006年6月21日掲載

 8月の知事選で田中知事に代わる候補者の擁立を目指す団体でつくる「新長野県政連絡協議会」(代表・永田恒治弁護士)は20日、都内で前自民党衆院議員の村井仁氏(69)に立候補を要請した。村井氏は「本当にやらなければならないという話になれば、この身をささげてやる」と述べ、出馬に強い意欲を示した。同党県連内でも、村井氏擁立を念頭に、「輝く明日の長野県を考える会」(代表世話人・近藤光連合長野会長ら)を含む幅広い結集を求める動きが広がっている。告示まで1カ月。模索が続く現職への対立候補擁立は、大きく動きだしつつある。
 「ぜひ『出馬宣言』をお願いしたい」。この日、都内の村井氏事務所を訪れた連絡協の永田代表ら7人は、強い口調で要請した。「何としても優れたリーダーを確保しないと、何のために運動を続けてきたのか分からない」。永田代表の言葉には焦燥感も漂った。
 連絡協は前夜、全会一致で村井氏への出馬要請を決定。この日の同氏への要請書では「県政は混乱の極みに達している」とし、経済活性化や市町村、県会、県職員との関係修復などを求めた。
 村井氏は「重く受け止め熟慮する」とする一方、連絡協との会談やその後の取材に「(出馬が)定めということなのかな」と述べるなど、前向きな発言も繰り返した。
 長野2区を基盤に衆院議員6期を務めた村井氏。郵政民営化関連法案に反対し、昨年の衆院選を機に政界を退いたが、自民党県連会長時代の昨年6月の役員会では、県政の現状を「混迷と停滞」と指摘するアピールをまとめるなど、田中知事の県政運営をこれまでも批判してきた。
 ただ、村井氏は「県民がやらせてやろうかとお考えになるかどうか」とも述べ、立候補には幅広い支援態勢が必要−との認識を示す。
 村井氏側が注視しているとみられる一つが「考える会」の動向だ。連絡協の別のメンバーはこの日、ほぼ同時刻に長野市内で同会の近藤代表世話人と面会。会として村井氏を「統一候補」とするよう求めた。
 会は田中知事の対立候補擁立の軸と目され、自民、民主両党の県連に政党間協議を呼び掛けてきた。1カ月前には「前衆院議員」を有力な候補の1人に挙げており、村井氏を指すとみられる。
 要請を受けた近藤氏は「本人に前向きな決意があるのかどうかは重要な要素」と話したが、村井氏擁立を決めるかどうかは明言しなかった。ただ、この日は県市長会長の腰原愛正大町市長、県町村会長の藤原忠彦南佐久郡川上村長も近藤氏に会い「1日も早い候補選出を」と訴えるなど、会の方針提示を求める声は強まっている。
 自民党県連内でも、同氏への「待望論」が出つつある。県会議長で同党所属の萩原清氏(松本市)は20日、松本市内で開いた農業団体の集まりで「村井氏が立候補する可能性がある」と明言。「『考える会』には1日も早く村井氏について良い悪いの判断をしてほしい」と求めた。
 ただ、党内の事情は複雑だ。県連は候補者公募を経て、出馬表明済みの公認会計士、若林健太氏(42)=長野市=を今月、「考える会」に推している。「正式な政党推薦ではない」(県連)とするが、同党の若林正俊参院議員(県区)の長男でもあり、「健太氏にどう対応するか。簡単に村井氏支援とはいかないだろう」(県連幹部)との見方もある。
 この日、長野市、松本市で街頭演説やあいさつ回りをした健太氏は「村井先生が判断をしていない状況でコメントすることはない」と述べた。
 一方、党所属の羽田雄一郎参院議員(38)=県区=の擁立を模索する動きが出ている民主党県連。羽田孜代表は「県民の議論で村井さんが必要ということなら、個人についてはとやかく言わない」としたが、「国政を辞めた村井さんが県政をやることの必然性が果たして理解されるのか」と疑問を投げ掛けた。
 長男の雄一郎氏の出馬の可能性については「知事として本当に必要ということなら考える」と述べるにとどまった。
 告示に向け、知事選の選挙構図はどう定まっていくのか−。依然として去就を明らかにしていない田中知事は節目となるこの日、公務日程がなく、県庁に姿を現さなかった。


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