信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

岡谷市で新設の避難勧告基準 運用の難しさに直面
2006年8月15日(09:22)

 7月の豪雨で土石流災害に見舞われた岡谷市が、災害後に新たに設けた避難勧告基準の運用の難しさに直面している。安全を最優先にして基準を低めに設定したため、12、13日と2日続きで、避難勧告の基準雨量を突破。しかし、市は両日とも、天候の回復などを理由に避難勧告は出さなかった。住民の負担を考慮した結果だが、基準の位置付けがあいまいになる結果となった。

 対象住民は、災害後に土石流感知センサーを設置した市内11河川の流域に住む計716世帯。諏訪湖の釜口水門の雨量が「連続30ミリを超えたか、1時間当たり10ミリ以上が予想される場合」に市は避難の準備を促す「避難準備情報」を出す。さらに「連続40ミリ以上か1時間当たり10ミリ以上の場合」は「避難勧告」を出すことにした。

 これらの基準は、災害発生から避難勧告を全面解除した8月1日までの降雨のうち、最も多かった雨量を基に設定。この間に激しい降雨がなかったため、基準は低めの設定となり、夕立程度の降雨でも超える可能性があるのが実情だ。

 12日昼は降り始めから1時間50分で連続雨量が40ミリを超えた。13日夜も30分ほどでこの基準に達し、間もなく小雨になった。12日は避難準備情報が出たものの、避難勧告は両日とも出なかった。市は、天候の回復や「対象河川に異常がない」ことなどを理由とした。市危機管理室の小口明彦室長は「700世帯に避難してもらう重さもあり、勧告を出すべきか災害警戒本部会議でも迷った」とする。

 被災住民の中には「安全を重視するなら基準に従って即座に勧告を出すのが望ましい」との声もある。ただ、何度も勧告が出れば、被災住民の不安や疲れが増す恐れもある。小口室長は「2回の降雨の経験を踏まえて早急に基準値の見直しに取り掛かる」としている。


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