信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

心身ケア急務に ストレスで体調不良も 岡谷の避難生活
2006年7月26日(09:50)
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 19日に発生した豪雨災害から1週間を迎えた岡谷市。25日現在も市内では270人が5カ所で避難所生活を余儀なくされている。疲れがたまり、今後への不安が募る中、行政も健康や住居の面で支援を加速させているが、なかなか追い付けないのが現状だ。
 土石流が起きた同市湊の住民190人余が避難生活を送る湊小学校。避難住民によると、夜中に寝言で「逃げろ」と叫んでうなされる男性もいた。50人余が避難する近くの岡谷南部中学でも、ある女性(69)は「慣れない生活に寝付けず、眠剤(睡眠導入剤)を飲むこともあるが、あまり効かない」と、やや疲れた表情だ。
 同日、カウンセラーらと市内の避難所を回った諏訪保健所の寺井直樹所長は「住民たちは、まだ気が張っているようで相談はあまりない」。しかし、「心も体も確実に疲れている。気楽に話してほしい」と呼び掛ける。
 市内の市立岡谷病院や健康保険岡谷塩嶺病院、市医師会などは19日から、避難所での巡回診療を続けている。25日までに延べ200人近い医師や看護師を派遣。3―5人でチームを組み、各避難所で1日2―3回、住民を診察するとともに、治療が必要な場合には市内の病院や医院に送っている。
 塚田昌滋・市病院事業管理者によると、災害発生当初は、外傷の診察が中心だった。避難所生活が長引くにつれ、「不安や興奮で血圧が高くなったり、ストレスによる不眠や便秘、胃痛などを訴える住民が増えてきた」と言う。
 湊小に避難する住民でつくる組織の代表、花岡宏さん(62)は「23日の一時帰宅の際に全半壊した自宅を見た人たちの間で、今後の経済的な不安が広がっている」と指摘。「いつまで避難勧告が続くか分からず、じらされている」と、先の見えない生活にいら立ちを話す住民もいる。
 避難勧告の解除について対策本部長の林新一郎市長は「災害現場に残る土砂撤去の進み具合も判断材料の1つ」と記者会見で説明。26日から、土砂や流木の搬出を本格的に始める方針だ。
 一方で、対策本部は、空いている市営・県営の公営住宅計33戸を仮住宅として提供するため、市役所に相談窓口を開設している。市内の建物被害は20日現在、全壊・半壊が計35戸。25日までに被災した13世帯が公営住宅への入居を希望し、うち9世帯が同日から順次引っ越しを始めた。担当する市都市計画課は「親類宅に身を寄せているなどで、入居を迷っている人もいると思う。今後も窓口の利用を呼び掛けていく」としている。
【写真説明】避難所となっている岡谷市の湊小で、巡回した医師に体の不調を診てもらう被災者


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