「ゴーという大きな音がして目が覚めた。外を見るため玄関を開けようとしたら、既に土砂が押し寄せていて動かなかった。急いで子どもたちを起こして別のドアから外に逃げ出した」
１９日午前５時ごろ発生した土石流で複数の住宅が被害を受け、行方不明者も出ている岡谷市湊３の現場。自宅近くの高台にある寺に家族５人と避難した中西孝さん（４８）は、沈痛な表情で当時の状況を振り返った。
同地区は諏訪湖に面した山際に住宅が立ち並ぶ。山側から湖へと下る何本もの生活道路が、土砂や倒木の交じった濁流の通り道となり、道路沿いの多数の民家に被害を出した。
寺には、濁流から逃げ出した同地区の子どもからお年寄りまで２０人余が、毛布をかぶり雨でぬれた体を温めていた。「６０年も（同地区に）住んでいるが、こんな災害は初めて」と話すお年寄りも。
同地区では住宅１棟が焼ける火災もあった。この住宅に住む小口敏弘さん（４２）は家族と寺に避難。「ドドドという地響きの後に、押し寄せた倒木が当たったのか、家が大きく横揺れした。気付いたら家の中に火が回っていた。それでも家族３人全員、無事でよかった」と声を震わせながら話した。
【写真説明】道路に沿って押し寄せた土砂や倒木で自動車が押し流され、家屋も多数損壊した＝１９日午前５時５０分ごろ、岡谷市湊２
