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信毎の本ガイド

羅浮山蝶ゆらり

羅浮山蝶ゆらり

文芸・評論・エッセー  中国古文献に記された謎の蝶「小鳳凰」とは何か。それは世界で最も珍しくも美しい、あの黄金天狗揚羽なのか。長野県信濃美術館で出会った菱田春草の名画「羅浮仙」に始まる考証の旅は、深まる謎を追って中国広東省・羅浮山(らふさん)へ。その最高峰・飛雲頂にたどり着いた時、霧の中から舞い現れた蝶は…?
 蝶と人間とのかかわりを追求してきた著者の「蝶と民俗」シリーズ第五弾。

●信毎本紙掲載記事より---------------
<足掛け3年 幻のアゲハ追う>
06061101.jpg 羅浮山蝶(らふさんチョウ)。そんな名の蝶、どの図鑑にも載っていない。今井彰さんが「羅浮」の名に出会ったのは、知人を案内した長野県信濃美術館(長野市)で見た、菱田春草の美人画「羅浮仙」が最初だった。
 まず大漢和辞典でそれが「中国の広東省にある山の名」と知り、さらに中国の古文献「広東新語」をひもといて、そこには山名を冠した、山にすむ仙人もその美しい色彩を褒めたたえたと言われる蝶がいるらしいことを知る。
 それは、40余年の会社勤めの傍ら蝶に関する著作が既に5冊あり、須坂市の生家を改造して「蝶の民俗館」をオープンしたほどの蝶マニアである今井さんにしても耳にしたことのない蝶だった。
 「胸が高鳴りましたね。そして古文献を調べていくうちに、世界でもめったに見つかっていない幻のオウゴンテングアゲハ(黄金天狗揚羽)のことかもしれないと思えてきた。だとしたら従来の欧米人による新種発見より1世紀も前の話。これはどうしても現地に行って現物を捕まえなきゃ」
 その足掛け3年にわたる探索ドキュメントが、自著6作目となる本書の目玉になっている。
 長野高校で生物班に所属―と聞けば、捕虫網片手に山野を駆け巡る少年時代を想像するが、「本当は受験に役立ちそうだったから」が動機。実際の入門は社会人になってからで、秘書として仕えた上司が蝶コレクターで、その人から採集から標本づくりまで手取り足取りの指南を受けた。
 「でも、この道、本気で採集を目指すなら、少なくとも日本にいる240種くらいは全部集めなければ話にならないが、私は勤めがあってなかなか長期の休みはとれず、蝶の宝庫の北海道、沖縄まではとてもカバーしきれない。それであきらめたんです」
 コレクターをあきらめ、代わりに選んだのが「蝶の民俗学」。最初に注目されたエッセーでは、万葉集に蝶が登場しないことに着目し、古代人は現代と違い、蝶を「死者の魂の化身」と恐れ、忌み嫌ったからだ―と分析した。
 そうした蝶と人間のかかわりへの著者の探求心は本書でも「蝶を描いた画家」「蝶がキーとなる推理小説」などでいかんなく発揮されている。(信濃毎日新聞社・1890円)
 【いまい・あきら】1935年須坂市生まれ。「蝶の民俗館」館長。著書に「地獄蝶・極楽蝶」「鎌倉蝶」「帝揚羽蝶命名譚」など。
(2006年6月11日読書欄掲載)



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