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朝刊音読 毎日1、2分…脳生き生きの効用

 15日から新聞週間が始まる。ベストセラー「脳を鍛える大人の音読ドリル」の著者で、声を出して活字を読むと脳が活性化すると説く川島隆太東北大教授(脳科学)に、新聞音読の効用を聞いた。

―音読で脳は活性化しますか。
 「人間の脳が何をすればどこが働くかを調べる脳機能イメージング技術で測定、どんな文章も声に出して読むと、左右の大脳半球の前頭前野を含めた多くの場所が活性化することが証明された」

―新聞の音読は。

 「同じものを繰り返し読むと記憶してしまい、だんだん脳の働きが少なくなる。新しいものを読む方が効果的だ。新聞は毎日家庭に届く新しい文字。声に出して読むことで、脳にいつも新しい刺激が入り、活性化する」

―どのような読み方が効果的でしょうか。

 「できるだけ早く読むこと。声に出してある程度の分量を読む、長さはコラムくらいが適当ではないか。私たちの研究では1、2分で十分効果がある。小さな声でも大きな声でも、起きてでも寝てでも構わない。一番重要なのは毎日継続すること。人間の脳が一番よく働く午前中、それも朝食を食べた後。朝刊が適している」

―新聞記事はインターネットでも読めますが。

 「インターネットでもよいが、弱点はある。ビジュアル的に楽しい仕掛けが入るほど脳は活性化しなくなる。携帯電話のような小さいディスプレーを見ているときは、意外と活性化しないことも経験的に分かっている」

―新聞について。

 「子どもを健全に育てることを考えると、活字文化が失われることは非常に困る。今の社会はどちらかというと映像や音が優位だが、活字に触れて脳が活性化するのは、人として育つために重要」

 「人間が文明を築けたのは、数や文字を巧みに扱うことが得意になったからだろう。音で情報を伝えるのはほかの動物でもできる。活字の文化を失うことは、人間がサルに戻っていくこと。子どもたちをサルにしてしまわないためにも、活字は大事にしたい」

 「活字文化の根は家庭にある。親が活字から離れれば、子どもは活字に見向きしなくなる。家庭での活字文化は読書と新聞だ」

【かわしま・りゅうた】
 1959年千葉市生まれ。東北大大学院医学研究科修了、医学博士。スウェーデン王立カロリンスカ研究所客員研究員などを経て、東北大未来科学技術共同研究センター教授。

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