信濃毎日新聞ニュース特集

トリノ冬季パラリンピック

躍進ニッポン(下) 競技の底辺拡大
2006年3月22日掲載
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 トリノ冬季パラリンピックが終盤を迎えた18日、アルペンスキーの各国監督会議で、10代選手を対象にした「ユース・キャンプ」開催の提案があった。日本にとっても若手選手の育成、各競技の底辺拡大は今後の大きなテーマだ。
 スキーで獲得した9個のメダルのうち、3個はアルペンの大日方邦子(NHK・東京)、2個はノルディック・バイアスロンの小林深雪(日立システム・北安曇郡小谷村出身)。2人とも長野大会の金メダリストで、顔触れの固定化は否めない。
 ノルディックスキーの荒井秀樹監督は、トリノ大会の傾向として、1998年長野大会から出場しているベテランが目立つ点を指摘。その上で、強豪のロシア、ウクライナが組織的に将来性のある選手を探し出していることに注目した。「自分も学校を中心に、クロスカントリースキーの講習に回りたい」と話す。
 「もっと選手をそろえなくてはいけない。底辺拡大のために、ジュニア・プログラムをつくって若い世代を育てる必要がある」。アイススレッジホッケーの中北浩仁監督も、5位が確定した17日、こう強調した。
 3位の米国は選手の半数以上が20歳以下。日本は24歳の上原大祐(長野サンダーバーズ・北佐久郡軽井沢町)が最年少だ。中北監督によると、優勝したカナダ、2位のノルウェーも子ども向けのプログラムを始めているという。「小さいころからスポーツをしている経験はトップ選手になっても重要。日本も遅れてはいけない」と同監督。
 競技の普及、若い世代の育成は、パラリンピック・チームのスタッフだけでは、担い手があまりに限られる。地域の障害者スポーツセンターや学校との連携が欠かせない。荒井監督は「冬季スポーツの施設、プログラムを持ったセンターが必要だ」と主張する。
 今回の日本選手40人中、女子は7人だけ。冬季スポーツへの女性の参加拡大にも、コースに出るまでのアクセス、トイレなどの障害者に配慮した施設整備が重要だ。
 メダル1個に終わったトリノ冬季五輪後、選手強化をめぐる議論が起きている。態勢整備の必要性は障害者スポーツも同じだ。アルペンスキーの松井貞彦監督は「スポーツ省」設立を提案。「健常者は文部科学省、障害者は厚生労働省と分けて考えるのでなく、スポーツの底辺拡大と選手強化を、一体で考える時期だ」と訴えた。
   (トリノ=井上典子)
【写真説明】試合終了後、米国選手と握手するアイススレッジホッケー最年少の上原大祐(右から2人目)。米国選手は過半数が20歳以下だった=12日・エスポジツィオニ競技場(井上典子撮影)


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