信濃毎日新聞ニュース特集

大雨被害

「洪水型」の土石流 岡谷市川岸で信大研究者ら
2006年7月31日(09:02)
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 信大自然災害科学研究会の研究者らが30日、岡谷市川岸地区の志平川と本沢川の土石流発生現場を訪れ、状況を確認した。土石流発生の仕組みについて、ともに、水を通しにくい粘土化した層の上に積もった表土が集中豪雨で大量の水を含みきれなくなって崩れ、あふれた泥水が一気に流れ下った「洪水型の土石流」だったと、これまでの調査結果を説明した。
 研究会は信大理学部の研究者らを中心に構成。理学部の公文富士夫教授や全学教育機構の大塚勉助教授ら8人が豪雨災害発生後、志平川や本沢川の最上流域まで登り、表土が崩れた状況などを調べてきた。
 その結果、現場の山腹を覆う表土は、風化した火山灰や岩石の破片の「角れき」を中心に構成され、すき間が多く保水力が高かった。表土の下の地層「塩嶺累層」は、溶岩が噴出してできた安山岩や凝灰岩などで構成され、風化した部分(風化帯)は粘土化、水が染み込みにくくなっていた。
 このため、山頂に近い斜面で表土が大量の水を含んで崩壊。表土の大半は崩落斜面の下方に残ったが、含まれていた大量の水が洪水のように流れ出して、河床の土壌を浸食しながら土砂とともに下流域の住宅地まで押し寄せたと考えられるという。
 大塚助教授によると、斜面上の表土崩壊は志平川で1カ所、本沢川で少なくとも8カ所を確認。現場の傾斜が緩かったこともあり、濁流の中に土砂や岩石の割合は小さく、泥水の粘性も低かったため「水と泥や岩石が混合した典型的な土石流に比べ、樹木をなぎ倒す力は小さかった」とみている。公文教授は、仮に大きな岩石を含む土石流だった場合は、下流にある中央道の橋脚などにも大きな被害が出た可能性があると指摘した。


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